自宅で父が亡くなった。
 事件性が無いので5・6人いた警察官は
 次第に帰っていく、でも検死の先生の検査が終わるまで
 遺体とは会えない。
 今することは・・・連絡だ。
 しかし今は年の瀬の土曜日の23時
 携帯メールの出来るところへはメールで。
 意外と冷静にメールを打てる。
 しかし親戚筋には言葉が詰まって話せない
 「今父が」 なんて言葉は出てこない。
 「亡くなった」なんて
 もっといえるものではなかった。
 父は白菊会に入っている。
 なくなった後の遺体は大学病院に献体となっている。
 書類を探し出して読む。
 48時間以内に大学病院で処置を・・・
 深夜になっているが電話をかける。
 やっと検視が終わった。
 警察の方が帰るときに父を父の寝室に運んでもらう。 
 お布団はこれ 頭はこっち側 
 冷静を装っている自分がいる。
 揺さぶると目を覚ましそうな父の顔
 体が硬くなる前にしておかないといけないことは・・
 そんなことはどこでも習ったことは無い・・・
 手を胸の前で組ませていたような気がする。
 初めてそして最後父の掌や指や爪を
 しみじみ見ながら手を組む。
 父は入れ歯だった 
 入れ歯を入れていないと顔の形が変わるかもしれない
 「ごめんね」と言いながら口をこじ開けて
 入れ歯を入れて口を閉じる。
 葬儀はどこでしよう。
 近くの集会所? 駐車スペースが無い
 やはり近くの葬儀屋さん 朝一番に連絡。
 お寺さんは 菩提寺は遠すぎる
 知り合いの懇意にしているお寺に
 明日朝電話をしてみることに。
 葬儀用の写真はと言いながら
 パソコンの中の父の写真を探す。
 何で年末の忙しいときに・・・・・
 することが多すぎて泣くに泣けない。
 いずれ来ることは分かっていたのに、
 あえて避けてきた父の死の準備。
 年の瀬の夜の空気の冷たさだけが会話となった。